• 2023年05月11日
  • 眼科

長崎大学病院・眼科

働き方改革、取り組みの背景

長崎大学は2019年度から、働き方改革が困難とされる医療現場、医学研究分野における働き方改革を推進し、大学病院での取り組みを進めています。
<※長崎大学での取り組み経緯について、更に詳しくはこちら>
2022年度は、医局単位の取り組みチームを2チーム募り、私たちワーク・ライフバランス社のコンサルタントが入って助言しつつ、
チームごとの課題に沿った働き方の満足度アップや超過勤務時間削減に取り組みました。
本事例では、同年そのうちの1チームとして参加した眼科の取り組みの一部をご紹介します。

チームの概要

長崎大学病院の眼科チームは医師23名、看護師32名、視能訓練士10名、医療事務2名の4職種、計67名で病棟と外来業務を行っています。

1日の外来受診者数は平均84名、病棟患者数は29名、入院期間は6日、1日あたりの手術件数は15件です。外来は1日の受診者数が多く、患者さん1人に行う検査も多数あり、病棟は入院患者数が多く、入院期間が短いため、患者さんの出入りが頻繁です。眼科という狭い領域であるため治療の専門性が高く、診断・検査、外科的内科的治療、社会生活サポートまでを一貫して担当しており、患者さんも全年代が対象です。

取り組みの概要(1)…「早く帰る」ためには?

働き方改革のスタートにあたり、チームの「ありたい姿」を検討しました。キックオフの会議で現状の課題をふせんに書き出して整理し、その解決策をできるだけ多く挙げました。「1)向上心があり、2)みんなが満足感を持つことができ、3)壁のない、4)早く帰れる、5)笑顔のある、6)お互いを思いやれるチーム」という6つの要素を盛り込み、「ありたい姿」として設定しました。

 

6つの要素の中で優先順位を付けて取り組むことにしました。最初に取り組んだのが、「4)早く帰れる」という要素です。「早く帰れない原因」を分析すると、「会議が長い、周囲の目が気になって早く帰れない、医師の雑務が多い」といったものが挙がりました。

次に、それぞれの課題を解決するためのアクションを検討し、実行しました。

会議が長い

会議とその内容ごとに現在かけている時間を計測し、その平均値を基に目指したい現実的な所要時間を設定しました。たとえば、「外来報告」に平均17分掛けていたところを10分に、手術検討に20分掛けていたところを15分に、という具合です。この時間を意識しながら司会と各担当者が準備と当日の進行を行ったところ、それぞれの会議を10分程度短縮でき、チームメンバーの時間への意識も高まりました。

・周囲の目が気になって早く帰れない

この問題を深掘りすると、心情的な問題(上司より先に帰りにくい、忙しそうな人がいると帰りにくい)と仕事の平等性の問題(業務量に差がある)が見えてきました。この両面を解決するために、まずは午後の急患担当を日替わりの当番制にしました。担当日があるとそれ以外の日は遠慮なく帰りやすくなり、担当医がいることでスタッフも早めに対応ができ、患者さんの待ち時間短縮にもつながる、という効果もありました。

・医師の雑務が多い

まずは軽減したい雑務の洗い出しを行い、2 つの取組みを行いました。

1 つ目は紙で来る他科からの連絡状処理のフロー変更です。それまでは医師が開封して内容確認、必要に応じてカルテに記載、スキャンを依頼、という流れで処理していました。改善後、まずは医事課がスキャンして眼科に連絡、確認した医師が必要であればカルテに記載、という流れに改めていくことにしました。まだ試用段階ですが、書類が溜まることがなくなり、業務がスムーズになりました。

取り組みの概要(2)…「お互いを思いやる」ためには?

続いて、「メンバーの名前と顔が一致せず、声を掛けにくい」という課題に取り組みました。ここでは顔写真付きの名簿を全員分作成し、各部署に提示しました。ちょっとした空き時間に見ることができ、名前と顔が一致するようになりました。名前を呼んで声掛けをすることで指示の行き違いも少なくなりました。スタッフの入れ替わりの度に名簿を修正する手間や、マスク着用で顔が覚えにくいといった課題もありますが、名簿作成は今後も継続予定です。

看護師や医療事務から「いつも10人ほどの医師が外来にいるが、誰に声を掛ければいいのかわからない」「職種間のコミュニケーションが少ない」という声が挙がりました。ここでは「何でも聞ける医師」を当番制で配置する、という策を実行しました。2週間ほど運用して参加者に感想を聞き振り返りを行ったところ、「続けたい」との声が多数で、改善すべき部分を見つけながら運用しています。

これらの取り組みの結果、1年前のキックオフ時には60%だった「ありたい姿」の達成度は1年後には85%まで向上しました。今後は、「診療自体の効率化」という大きな課題に取り組む予定で、患者さんの待ち時間とスタッフの隙間時間を減らすため、問診票、検査実施のタイミング、適正な外来医師数などの見直しを行う予定です。

1年間のプロジェクトを通じ、問題提起の場ができたことで、自然と皆が問題意識を持って発言するようになりました。また、外部コンサルタントの助言を受けながら、課題に優先順位を付け分解して1つずつ解決していくアプローチを、実践を通して身に着けられたことで、今後も継続した取り組みにしていけると思います。

担当コンサルタントから

眼科チームは短期間で多くのアクションを実行し、成果にもつなげることができました。この成功の秘訣は「メリハリ」にあるように思います。

たとえば、「会議が長い」という課題に「じゃあ短くしよう」としても簡単にはいきません。ここで眼科チームは「なぜ、会議が長くなっているんだろう」という分析を、時間をかけて丁寧に行いました。そして複数の要因が見えたあとは、そこへの打ち手をできることからすぐに始めました。そして、1つひとつの打ち手への振り返りをしっかりと行い、ブラッシュアップしていきました。こうした「時間をかけるべきところ」と「素早くやるべきところ」のバランスがとれていたと感じます。まずはできることから小さくはじめ、振り返りをしながらレベルアップしていく。この好循環を実践され身に着けられたことは、今後も取り組みを継続・発展し、さらに難しい課題にも向き合っていくうえで、大きな力になったと思います。

長崎大学病院・眼科

長崎大学病院・眼科

〒852-8501 長崎市坂本1丁目7番1号

▼長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学分野 (長崎大学病院 眼科)

https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/ophthlml/

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