- 2023年05月09日
- 薬剤部
長崎大学病院・薬剤部
働き方改革、取り組みの背景
長崎大学は2019年度から、働き方改革が困難とされる医療現場、医学研究分野における働き方改革を推進し、大学病院での取り組みを進めています。
<※長崎大学での取り組み経緯について、更に詳しくはこちら>
2022年度は、医局単位の取り組みチームを2チーム募り、私たちワーク・ライフバランス社のコンサルタントが入って助言しつつ、
チームごとの課題に沿った働き方の満足度アップや超過勤務時間削減に取り組みました。
本事例では、同年そのうちの1チームとして参加した薬剤部の取り組みの一部をご紹介します。
チームの概要
長崎大学病院の薬剤部は、薬剤師64名と調剤補助員8名、計72名の体制で構成されています。部とは言っても調剤室、麻薬室などに分かれており、各室で業務内容が大きく異なります。県内の離島病院に派遣されている薬剤師も数名います。勤続年数5年以下のスタッフが約4割と多く、あとは男女比率が1対2で女性が多いことが特徴です。
キックオフ時に設定したチームの「ありたい姿」は「部内の風通しがよく互いに助け合いながら、心身ともに健康で公私を充実させ、全員の個性を活かし目標を実現できるチーム」としました。ワーキンググループは毎月の1時間の定例会議で、それぞれの部署での進捗を報告し、振り返りと次のアクションにつなげました。
取り組みを通じて見えてきた課題
ワーキンググループ内で出てきた課題を整理すると、大きく4つに集約されました。1)気軽に相談できる相手がいない、2)他部署の状況がよくわからない・負担が一部の職員に偏っている、3)職員同士の交流がない、4)(取り組み以前から実施されていた)規定の「帰ろうデー」に帰れない、というものです。これらそれぞれに対応策を検討し、実施しました。
1)気軽に相談できる相手がいない
「同じ部署に気軽に相談できる人がいない」「誰に相談していいかわからない」という声が挙がったことから、「薬剤部ご意見箱」を設けました。具体的には部内のイントラネット上に投稿フォームをつくり、記名・無記名どちらでも投稿できるようにし、毎月の部内会議でアナウンスしたのです。運用から数ヵ月で8件の投稿があり、記名のあった5件はすべて勤続5年未満の若手でした。これまで埋もれていた意見が抽出できるようになったという点で、一定の成果を上げています。
2)他部署の状況がよくわからない・負担が一部の職員に偏っている
以前は、副部長が人員不足と判断した部署に毎回声掛けを行って人員調整をする、という方法を採っていましたが、COVID-19の感染流行によって就業禁止となるスタッフが急増。この方法では業務が回らなくなったこともあり、「業務調整シート」の運用を開始しました。これはスプレッドシート上に各部署の室長が人員不足の日時を記載し、それを見て各部署で人員を調整し合う、という仕組みです。運用後にアンケートを行って感想を集めたところ、「以前と比較して部署全体の協力体制ができていると思うか」との設問に「思う」との回答が83%、「やや思う」を合せると100%、「今後とも業務調整シートを使いたいか」という設問に「希望する」が100%と、高い効果と満足度を確認できました。
3)職員同士の交流がない
スタッフ同士の情報が少なく交流が生まれにくい状況があったため、全員の「職員プロフィール」を作成しました。「住んだことのある地域」「出身校」などを希望に応じて記載するほか、自由記述欄を広くとって、業務内容や趣味など、ほかの人に知ってほしい事項を書いてもらいました。スタッフ同士の会話のきっかけになっているようです。
4)規定の「帰ろうデー」に帰れない
もともと、第2・第4水曜日を部署全体で早く帰る「帰ろうデー」として設定していましたが、イレギュラー業務が入るなどで、なかなか実効性のある制度になっていませんでした。「そもそも部署全体で固定させる必要はないのでは」という意見から、週一度程度の「帰ろうデー」を個別で設定し、その日は該当者が定時で帰れるようにチームでサポートする、という仕組みに改めました。この制度はまだ導入してから日が浅く、実施しているのもまだ一部のチームに留まっているため、これから効果を検証する予定です。
今後の課題
今回の取り組みを通して、一定の成果を上げたものの、「そもそもの業務量を減らす」という根本的な取り組みはまだ手つかずです。今後は削減できる業務を検討する、薬剤部内でのタスクシフトを検討するなどのことを行う予定です。また、ご意見箱などの仕組みは整えたものの、やはり業務上の課題や不安は直接会って相談することが重要で、とくに若手に対する相談の時間が足りていないのも課題だと感じています。今後はこうした課題に取り組みながら、薬剤部全体で働き方に対する改革意識を持ち続けていければと思います。
担当コンサルタントから
キックオフのミーティングで「そもそも、なぜ薬剤師になったのか」という部分の共有からはじめたところが印象的でした。「化学が好きだったから」「友達のお母さんが薬剤師だったので」などの声が出てきて、お互いの仕事への思いの理解と共感が、プロジェクトのベースになったように感じます。
薬剤部の取り組みの素晴らしい点は2つあると思います。
1点目は「徹底的に要因分析をしながら進めた」という部分。たとえば「職場の風通しが良くない」といった課題はどのチームでもよく出てくるものですが、「どんなところ、どんなときに風通しが良くないと感じる?」と質問を掘り下げ、実際の課題の抽出や対応策に繋げていきました。
2点目は、「振り返りをしっかりした」というところです。「業務調整シート」実施後にアンケートをとったように、どの取り組みでも途中途中で振り返り、改善点を見つけると同時に、自分たちのモチベーションアップにも繋げていました。大人数の部署であっても、こうした関係性を大切にする基盤ができるとワーキンググループがしっかり機能し、改革を部門全体に広げることができると感じます。
長崎大学病院・薬剤部